粗利益率1%の重み

減収時代の昨今、高付加価値経営への転換は中小企業経営において、生き残るための絶対条件であると言えます。安易な低価格経営は、百害あって一利なし…。自社の経営を圧迫していくだけです。

業績拡大路線を考案する前に、優先順位として取り組む価値のある戦略が「粗利益率向上」経営です。粗利益率(売上総利益率)というのは、ブランディングにも直結する勘定科目です。

例えば売上高が、1億円あったとしましょう。業態は小売。粗利益率が30%の経営をしていたとします。粗利益額は3000万円ですね。

この粗利益率を1%上げてみましょう。300万円の利益が創出できる訳です。2%粗利益率が向上すれば、600万円の利益貢献ができます。

売上至上主義で推進するよりも、粗利益率向上・確保経営が中小企業には相応しい。

基本的な戦略は、「無理のない増収戦略(売上拡大戦略)を取りつつ、ブランディング経営で価格主導権を握り、高付加価値経営を推進する」です。

間違っても増収傾向の見栄えを良くするために、低価格戦略を展開しないようにしましょう。中小企業経営は、長期的視野でオペレーションしていくのが基本であり、一度低価格戦略に慣れてしまうと、それは麻薬のように社風に蔓延していきます。

粗利益率1%…たかが1%ですが、されど1%です。粗利益を上げるためには、商品・サービスのブランディング・シーズを磨き上げて、高付加価値経営を実現するようにしましょう。

投稿日: 2022年12月14日 | 5:46 am

売上を短期で上げるって???

決算期が近づいていくにつれて、計画予算との業績乖離が目立っていき、途方に暮れるような気分になる経営者がおられます。毎月の業績PDCAを実施しているのいるのは、とてもいいことです。しかし、目標が高すぎるとさまざまな経営判断を誤ってしまう要因になることは、本ブログで主張しているとおりです。

経費や利益目標との乖離が、激しくなってくると、短期間で売上を上げるような行動を取りがちになります。中小企業経営において、短期で売上を急激に上げる方法があれば、正直教えて欲しいと思います。

あるとすれば、一点です。それは、安売り…あるいは、低価格販売につながる販促戦術です。実はこれ、最大の禁じ手です。

売上という勘定科目は、膨張指数です。つまり、いくらでも膨らませることができるのです。プライスダウン戦略で、短期的に売上をあげたとしましょう。行き着くところは、粗利益が確保できない経営。つまり、利益を圧迫していく、負の循環経営ということになります。

短期間で売上をあげるような、無理あるオペレーションは、無理あるコスト管理につながり、いいことはひとつもありません。

売上という収益源は、長期的な視野でじっくりと上げていく取り組みこそが重要なのです。

短期的に売上を上げる???って、莫大な広告費をかけますか?それも、中小企業経営は限界があります。

以前のブログにも書きましたが、業績が苦しくなると、作戦会議もそっちのけで「全員営業!」を掲げ、現場で売上を上げることに注力していく経営者の末路は悲惨ですよ。

 

投稿日: 2022年12月12日 | 5:02 am

経営理念にブレないメンタルを…

コロナの収束が見えてきたこの頃ですが、中小零細企業におけるコロナ影響は、これからが本番というところでしょう。これまで返済猶予を受けていた企業も、そろそろ本格的な返済がスタートしてきます。これまでの企業努力が試されるのは、本当に「これから」なのです。ひとつ、コロナ禍における経済環境において、さまざまな評論家(診断士にもいましたが)が、アフターコロナは劇的に価値観が変化する…などの主張をしていました。

ところが、収束が見えてきたこの頃、中小企業経営においての価値観は変わっていますか?もちろん、変化はしているでしょう。それは時代の流れとも言えるのです。DXによる効率化は進んでいくでしょう。それはコロナの影響というより、時代が求めているモノ。

中小企業経営においては、これまでの経営の価値観が劇的に変化している訳ではないのです。

中小企業経営の基本は、これまでも。これからも「経営理念」にマッチしたさまざまなオペレーションを、ブレずに推進していくこと。業績が低迷しているときは、ついついテクニックに走り、目の前の業績向上にブレてしまう傾向があります。

企業経営は永続発展が理想であり、利益を追求することが目的ではありません。長期的な安定した業績を叩き出していくためには、ブレないオペレーションが重要です。

そのためには、経営者・幹部がブレないメンタルを発揮して、現場を導いていく覚悟が重要なのです。

目の前のオペレーションに捉われすぎると、「客離れ」という恐ろしい現象を招きかねません。

投稿日: 2022年12月5日 | 8:30 am

その商売…「志(こころざし)」はありますか?

一にも二にも、商売というものは志が大切だと思う今日この頃です。これまで、実にさまざまな経営者の方々と、対話し、観察し、時にご支援してきました。志(こころざし)なき経営は、結局は行き詰まり、結果的業績も悪化していきます。

一方で、志を表現した「経営理念」は掲げているのに、行動の原点(動機)が損得勘定で、ただの標語になっているというケース。これはもっと始末に負えない。

そういった薄っぺらな経営をしていると、すぐに見透かされますし、呆れられるのです。この現象は、誰に直接影響を及ぼすか?

自社の社員に多大な影響を及ぼし、経営者への忠誠心は著しく減少しいきます。

いつの時代でも、経営は「金儲け」が目的ではない。経営は「関わる全ての人を幸せにする」活動であり、業績(金儲け)はあくまでも結果現象なのですから。

経営者の皆様。あなたの会社は理念浸透する試みを実施していますか?

我が社の目的を文言化した「経営理念」の意味、そこに込められた想い…その共有化と行動への反映を図っていくこと。これは重要な経営者の仕事です。

そのためには、経営者自身が「志」に忠実でなければならない。経営者が、社員から「志(経営理念)と違うことを言うし、行動するね」と思われた途端に、会社へのロイヤリティ(忠誠心)は失われていき、モチベーションが下がっていきます。

社員のモチベーションが下がると、業績にすぐに現れてきます。業績というのは正直で、現状の経営努力が正しいかどうかを表す重要なバロメーター。

落ちていくのは早いですが、一度落ちた業績を回復させるのは時間と覚悟が必要ですよ。

投稿日: 2022年11月29日 | 8:32 am

中小企業診断士(経営コンサルタント)は現場に行け!

中小企業診断士の資格試験はある種独特で、通常の国家資格にあるような法律関係の問題は少ないです。「経営法務」と言う科目がありますが、会社法や知的財産関係の法律問題が主です。マクロ経済学から、ミクロ的な経営学まで幅広く、マーケティングの試験問題が出題される国家資格は診断士くらいでしょう。

マーケティングの学習の中に、各種フレームワーク(SWOTやVRIOなどの分析手法、成長マトリックスなどの戦略立案など)があります。そのためか、中小企業診断士の中にはフレームワークに頼って(それだけで)クライアントに助言するような輩がいるから困ったものです。

勘違いしてもらっては困るのですが、フレームワークは所詮フレームワーク。真の課題は現場にあります。メーカーなら工場に、卸なら倉庫や営業現場に、小売店なら売場に…常に現に赴いて、五感を研ぎ澄ませて現場観察し事実確認することからスタートするのです。

ヒアリングだけで経営診断など絶対に不可能!ヒアリングした情報は二次的情報だからです。中小企業診断士は常に一次的情報を把握して、強み・弱みを把握し、外部環境を掛け合わせて戦略立案する…。そう頭の中は常にSWOT分析です。が、そこにインプットする情報は、確実に一次的情報!

自らの目で見て、耳で聴いて、匂いを嗅いで、触ってみてあ、味わってみる…その現場確認でしか得られない貴重な、生きた情報なのです。

現場に行き、現場の空気を感じ、現場で起きていることを観察するこを怠ると、的外れなコンサルティングを提案してしまうのです。

投稿日: 2022年11月21日 | 5:09 am

売上至上主義?品質至上主義?

経営者が日々において、最も気になる経営指標といえば「売上」ということになります。損益計算書の最初に記載されている指標は「売上」ですよね。これには意味があって、経営者が一番きになる指標だから…と僕は勝手に思っています。

実はここに大きな落とし穴があります。売上というのは、「対目標、対前年の比較によってマーケティング戦略の検証をする指標である」と僕は定義しています。そして、売上は膨張指数であることを忘れてはいけません。つまり、低価格販売や値引きをすれば(極端に言うと叩き売りすれば)、拡大してしまう指標なのです。

そこで、僕は中小企業こそ「品質至上主義」を提唱したいと思っています。つまり、売上の検証ばかりでなく「粗利益率」の検証。商品自体のクオリティの検証。人財力の検証などを導入するのです。

企業ブランドを構成するのは、「商品」「人財」「取り組みそのもの」などのコンセプトです。ブランディングに成功すれば、高付加価値経営(高粗利経営)が実現できます。これこそが、中小企業が目指す王道戦略なのです。

売上の検証から導き出される課題は、営業戦略の次の一手ということになるでしょう。

ところが、品質の検証はなかなか嫌煙しがちです。手間隙を要するからでしょう。品質検証こそ、導入すべきオペレーションです。我が社の商品・サービス、人財力はキラキラと輝いているか?

差別化はできているか?オンリーワンポイントは創出できているか?継続できているか?

ブランディングファクターは、その価値をお客様に伝えているか?見せれているか?

そのような検証事項を盛り込み、品質重視経営を運営していきましょう。

投稿日: 2022年11月17日 | 5:01 am

社会貢献色の強いビジネス形態

企業経営は社会貢献の一面があります。当たり前ですが、「納税」「雇用」「価値の投下」…そのほか。社会貢献の志を忘れた会社は、発展していかない。前回も述べましたが、それはただの金儲け。金儲けをしたいなら、中小企業経営を手がけるべきでありません。

最近思うのですが、社会貢献色の強いビジネス形態があります。分野で言えば、「教育」と「福祉」がその最たるものであると言えます。

社会貢献性が高いということは、そこの投入される税金も優先権があるということになります。その税金に群がる会社が、さまざまな大義名分を掲げてビジネスをスタートさせています。

目立つのが、フランチャイズ化してノウハウを提供し、事業軌道化が早いなどという謳い文句でビジネスを展開している現状。そこに志があるならいいのですが、ほとんどの動悸が不純といってもいい。

なんか儲かりそうだから…とか、苦戦する現在ビジネスの起死回生の一手…などといった動機で始めてしまうと、リスクです。何度も言いますが、企業経営の成功は「永続発展していくこと」。今は、潤沢な税金が投入されているかもしれませんが、それも先行きは分かりません。

「療育」「介護」「教育」「保育」…このような社会貢献度が高いビジネスは、本当に覚悟が必要です。もしも失敗してしまうと、困ってしまう人が大勢いるからです。

また、事業であれば一般社団法人やNPOなどといった形態でなく、株式会社や合同会社で運営すればいい。問題は、志なのですから。

投稿日: 2022年11月16日 | 5:32 am

金儲けをしたいなら、株でもやれ!

中小企業診断士(経営コンサルタント)の仕事は、経営者の人間性をみつめる一面があります。僕も、経営者の言動を注力して観察しますが、中にはどうにもならないような「経営理念との矛盾」を感じてしまう経営者がいることに、残念感を覚えます。

そんなとき、「貴方の矛盾はとっくに見抜いてますから。軽く見ない方がいいですよ」などと心の中で呟きながら、支援に入る訳ですが…笑

立派な経営理念を掲げておきながら、また、口では立派なことを言いながら、行動がその真逆という経営者は、「雇用」という責任ある仕事を放棄すべきです。

一人で経営するならまだいい。社員をひとりでも雇用した瞬間から、経営者はとてつもない重責を負っているのです。

そのような経営者に共通しているのは、「実際は、何の商売でもいい。金儲けなんだから…」という心理。そこには、志などは皆無。何度も言いますが、商売・経営においてもっとも大切なのは「心=ハート」「志」「信念」といったブレない要素なのです。

「金儲けをしたいなら、株でもやったらどうですか?」そう言いたいですね。

中小企業経営は、金儲けの手段ではありません。そんな経営は正しい経営とは言えず、衰退していきます。なぜなら「支えられない経営」だから。

金儲けは、あくまでも結果現象であり、目的ではないのです。目的はあくまでも、経営理念の実現。成功とは、あくまでも大儲けすることでなく、企業が永続発展していくことなのです。

 

投稿日: 2022年11月14日 | 5:22 am

中小企業診断士が手がける人事考課制度

中小企業の多くが、独自の人事考課制度を持っていないか…あるいは、使いこなしていない現状を、ここ数年散見してきました。

「数年前に、ある人事コンサルタント会社に依頼して人事評価制度を作ったが、全く使えないし、使っていない」

「人事評価制度の評価が分かりにくい。点数がつけづらい。」

「評価を、給与や賞与、昇格・降格に反映させていいか…ここまで支援してくれないから使いこなせない。」

このような不平不満を、幾度となく耳にしてきました。また、これが結構高額な報酬を払われているから、悲惨です。報酬は数百万円するから困ったものです。もちろん、すごく使いやすくて、分かりやすくて、管理しやすい…そんな人事考課制度なら高額でも価値があるでしょう。

人事考課制度の導入ポイントを、いくつかご提示しておきます。

①「解りやすい」…被考課者(評価、考課される方々)が解りやすい(理解しやすい)というのが前提です。

②「管理しやすい」…企業の人事担当者が管理しやすい制度でないと、いつの間にか使われなくなる運命にあります。

③「物心両面に影響しやすい」…給与や賞与、昇格・昇進などにどう影響するのか、リンクが明確になっていること。

④「オリジナル性がある」…その企業ならではの評価・考課項目が設定されていてオリジナル性がある。

⑤「面談制度が設定されている」…考課結果を書面でなく、面談で伝える制度になっている。書面で「心」は伝わらない。

以上5点。これは、未来志向型の士業・中小企業診断士が策定する分野だと、僕は勝手に思っているのです。

投稿日: 2022年11月10日 | 5:15 am

”全員営業”を唄う中小企業の末路

業績が苦戦してくると、経営者の中には「外に出て稼げ!」とか「全員営業スタッフとして外販してこい!」とか、トンチンカンな声を荒げる人が現れてきます。ずいぶん昔のこと(10年ほど前)ですが、とある中小企業の会議室に入った時、壁一面に貼られたチラシに仰天した思い出があります。

無数に貼られたチラシには「只今、業績緊急事態宣言!」とか「全員営業。全社を上げて業績回復を!」とか、「売らない社員は会社を去れ!」とか書かれていました。

この会社、末路は悲惨で…。

そのような標語をいくら掲げたところで、業績が回復するはずもありません。今、侵略戦争をしているどこかの国と一緒のロジックです。

業績を回復し、その回復した業績を維持することが大切であり、そのためには「社員のモチベーションを上げ、我が社の商品品質を見直し、価値を向上させる」ことが大切です。

業績第一主義…経営は儲かってナンボ!そういう経営は、いつまで経っても業績が回復しないのは、歴史が証明しているのです。

営業とは、我が社の商品品質価値をお客様に提案する活動のことであり、品質自体が伴わないと、営業も成果を出せません。営業スタッフのモチベーションが低いと尚更です。

また、営業活動の時間的確保を意図して、会議やミーティングをおざなりにすることも良くありません。企業業績の責任は、営業部だけが負っているいるわけではない。会社全体ひいては、経営者が第一の責任者なのです。

一度落ち込んだ業績を回復させるには、じっくりとした腰を据えた取り組みが必要ですし、それは短期的に成し遂げられるものではないのです。

投稿日: 2022年11月9日 | 5:32 am