中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【39】

【中小企業診断士が成すコンサルティングサービス:パートプロジェクト】

中小企業診断士として、クライアントの経営参謀を務め、戦略会議や経営会議のPDCAを回す支援をしていると、様々な経営課題が発生します。経営は課題発生の連続です。その課題は、中小企業診断士として向き合わなければならない命題です。

その場合、パートプロジェクトという形で期間契約を新たに結び、新して解決することになります。パートプロジェクトは、実に様々な課題解決命題があります。無限と言っても過言ではないでしょう。中小企業診断士は、連続発生する課題を「それは専門外ですから…」と言って避けるわけにはいきません。

経営者の不安を、少しでも和らげることから始めることが大切ですから、お悩みを聞いた瞬間に”ある程度”の「解決仮説」を描き、提案することが大切です。

専門外でのお悩みでも、”我関せず”という発言は、経営者の信頼を得ることはできません。むしろ、参謀役として失格です。

望ましい発言としては、「今お答えするには、確証がありませんので、後ほどお答えします」です。そして必ず、速やかにプロとしての見解をお伝えすることが大切です。

さて、パートプロジェクトを支援する場合、期間と内容を示したガントチャートで進捗管理をしていきます。またゴールイメージを明確にします。

小生もこれまで様々なパートプロジェクトを支援してきました。実例をお示ししましょう。

◉新商品開発プロジェクト  ◉人材採用・育成制度導入プロジェクト  ◉人事考課制度策定プロジェクト ◉経営改善計画書策定・金融機関交渉・リスケジュールプロジェクト  ◉M&A、分社化プロジェクト etc.

中小企業は課題の連続…。中小企業診断士は、身近な経営の相談役(町医者)として、どれだけクライアントの課題に寄り添い、解決支援するか…が試されているのです。

パートプロジェクトの特徴は、単に”診断”して助言したり経営資料を策定する仕事ではないことにあります。つまり、何かを”創り出す”クリエイティブ力が試される仕事であることを認識しましょう。

投稿日: 2020年10月12日 | 6:25 am

『燃える人事考課制度』のメカニズムー10

【評価項目の設定】

評価項目というのは、考課(評価)をする際の大枠のカテゴリのことです。一般的な考課制度における評価項目とは、「情意評価」「能力評価」「業績評価」などです。

「燃える人事考課制度」では、評価項目も定型的に固定しているわけではありません。固定してしまうと、業務の実態に添わない考課制度ができてしまうからです。例えば…総務系の仕事に従事しているスタッフが、業績評価をされることは何かと不具合が生じていきます。

総務や経理は、間接部門であり直接お客様と接して、収入を得てくる部門ではありません。そこで安易な人事考課制度では、「情意評価」に重点を置いてしまいます。そのこと自体は否定しませんが、総務系だからといって情意評価ばかりにスポットを当ててしまうと、偏った考課制度になります。

ちなみに情意評価とは、仕事に対する姿勢やマインドを評価する項目で、ただでさえ測定が困難です。

では、「燃える人事考課制度」における評価項目(例)を紹介します。

「期待成果の評価」…いわゆる定量評価(業績評価)です。

「経営方針貢献の評価」…単年度経営絵計画書内の役割分担にどれほど向き合ったか?を測定します。

「チーム(組織)貢献の評価」…チームの一員としてあるべき言動を評価します。

「お客様貢献の評価」…お客様に対するマインド、接遇、接客、CS向上への取り組みに対する評価です。

「知識・スキルの評価」…業務遂行力向上のためのナレッジや能力の成熟度を測定します。

ひとつの事例ですが、このように5つの評価項目を設定することで、評価要素を抽出しやすくなります。ただし、業務の内容によって評価項目も応変する必要があることの注意しましょう。

投稿日: 2020年9月29日 | 11:01 pm

100点満点の経営なんてありえない。

人間は、完璧な存在などありえませんよね。企業経営も同じです。完璧な経営などこの世に存在しないのです。ときどき、経営者とお話ししていると(特に経営幹部に多い現象のですが)、「我が社の経営は全くなってない…」という言葉をときどき聞きます。

はっきり言いますが、経営に100点満点なんてありえません。人間も会社も、悪いところ(表現は良くありませんが)を引きずりながら歩いて行っているのです。

特に経営においては、いったん立ち止まり、課題を解決してから歩き出すなんてことは不可能です。日々、経営資源たる「ヒト、モノ、カネ、ジョウホウ…」は流動的に動いているのですから。

経営者は、走り続けなければなりません。経営は、ゴールのないエンドレスのマラソンのようなものです。

ただし、立ち止まることや逆戻りができない、厳しいマラソンです。そして、競争する相手は自分(自社)です。まさに「敵は内にあり、味方も内にあり」です。

このようなことを鑑みると、100点満点の経営を目指すより、及第点(60〜70点)を実現しながら、末長く経営して行った方が健全です。

中小企業経営は課題の連続です。次から次に迫る経営課題には、時に真っ向から解決することに組み合わずに、サラリとかわして(放っておいて)前に一歩進むことも一案です。

健全な経営の発想は「一足飛びに躍進する」ではなく「三歩進んで二歩下がる…やっと一歩進む」です。

一歩ずつ進んでいき、積み重ねて振り返れば大きく躍進していることに気づくはずです。

投稿日: 2020年9月24日 | 10:23 pm

山積する課題にウンザリするとき…

中小企業経営は課題の連続です。問題・課題のない経営は存在しません。逆に言うと、課題があるだけ健全なのです。

経営会議などに参加してファシリテートしていると、課題の多さ・大きさに少々ウンザリする瞬間があります。そんな時には、全てを同時に解決する発想を捨てることが重要です。

”あれもそれも、どれもこれも”などと、同時にソリューションしようとすれば、それだけ神経をすり減らしますし、精神衛生上良くありません。また、コストや時間も余計に費やしてしまいます。

大切なのは”優先順位付け”です。解決の優先順位をつけて、各個撃破していくことが大切です。優先順位は、まず「カネ」に関わる問題と「ヒト」に関わる問題を比較して取り組みます。

致命的な「カネ」(例:資金繰りや資金ショートが迫っている状態の回避)は最優先事項です。経営の血液たる「カネ」が亡くなってしまえば、失血死の状態に陥ります。

もし、緊急性の高い「カネ」の問題でなければ、解決の優先順位は明らかに「ヒト」の問題に向き合いましょう。

社員のモチベーションや組織構築の崩壊につながりかねない社内の問題は、経営者が祖先して取り組むべき緊急課題です。

カネの流出よりも、ヒトの流出の方が経営にとって最も痛恨です。人財が中小企業経営にとって、最大の経営資源であり唯一の財産だからです。

「カネ」も「モノ(商品やサービス)」も「ジョウホウ(ノウハウや知的財産)」も人財がもたらす産物にしか過ぎません。

優秀な人財さえ揃っていれば、お金を稼ぐことも、いい商品やサービスを開発・提供することも、ノウハウや知的財産を形成することも可能になるからです。

投稿日: 2020年9月22日 | 10:34 pm

『燃える人事考課制度』のメカニズムー10

【評価項目の制定】

評価項目は、大枠の評価カテゴリのことです。この評価カテゴリを間違うと、評価の視点がズレて「評価して欲しいポイントが外れ、評価しなくていいポイントで評価してしまう」という現象を招きます。

「燃える人事考課制度」では、評価項目を「チーム貢献の評価」「お客様貢献の評価」「知識・スキルの評価」をマスト項目として推奨しています(もちろん、絶対条件ではありません)。

よく、「業績評価」と「能力評価」「情意評価」という評価項目に分けている考課制度をみますが、この「情意評価」というのが曖昧になりがちです。仕事に対する姿勢を評価するのですが、情意評価として評価項目を設定する場合は、「行動観察」を基本とした評価基準を制定しないと”使えない人事考課”になってしまいます。

悪い例の典型) 情熱を持って仕事に向き合っているか?(1・2・3・4・5)…。

一体何を持って評価測定するのでしょうか?評価基準があまりにも曖昧で、測定できかねます。後述しますが、「評価基準」は”できるだけ分かりやすい(測定しやすい)文言を策定する必要があります。

「評価項目」も経営理念とリンクさせることがベターです。経営理念の中の行動基準(約束事)のベクトル(方向性)を評価項目とします。

おそらくそのベクトルは、社内(組織やチーム)と社外(お客様や関与先)に分けられると推察します。

さらに言えば、オリジナルの評価項目を設定することもお勧めです。経営理念の内容を吟味し、中でも最も大切にしたいフレーズを考課に落とし込む手法です。

例えば、「品質」が最も価値がある視点であるとすれば、評価項目に「品質へのコミット」として項目化するのです。

投稿日: 2020年9月20日 | 6:27 pm

道、とおき道 〜中小企業診断士の道しるべ〜

「この道より、我を生かす道なし。この道を歩く」(武者小路実篤)…。経営コンサルタントとして活動して、延15年。中小企業診断士として13年目に入りました。ただひたすらに、コンサルティングとクライアントの繁栄に注力して走った日々。

「この道より、我を生かす道なし。この道を歩く」という言葉が、身にしみて感じられる今日この頃です。

以前、「私は失敗したことはありません。」と宣う自称経営コンサルタントがいました。明確に断言できますが、十戦全勝という経営コンサルタントはこの世に存在しません。

うまくいくこと、うまくいかないこと…うまくいかない時に「どうするか?」を考え、次の手を打つ準備や提案をするのがプロのコンサルタントの使命でしょう。

もしも「経営コンサルティング道」という言葉があるとすれば、まさに”「道、とおき道」だなあ”と思う今日この頃です。

幸い、小生には敬愛すべき経営コンサルタントの先輩に恵まれました。諸先輩方は、どの人も人間として尊敬でき、コンサルティングのマインドやスキル、知識において「まだまだ太刀打ちできない領域におられる」方々です。

先輩方は「中小企業診断士」の国家資格を持ってる方ではありません。

プロの経営コンサルタントとして、自らの知識やスキル、ノウハウで勝負されている方々です。中小企業診断士として、国家から付与された資格を持って看板としている以上、その価値をもっともっと高めたい…そんな想いを強めて、「中小企業診断士のマインドセットーARIKATA」を綴っています。

全国で2万人と言われる中小企業診断士が、もっと中小企業の経営の現場に寄り添い、課題解決に奔走する…。小生の活動が、そんな道しるべでありたい…と願っています。

投稿日: 2020年9月15日 | 10:09 pm

中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【38】

【中小企業診断士が成すコンサルティングサービス:ビジネスマッチング】

中小企業診断士の本分は、「価値と価値を掛け合わせて、新しい価値を創る(あるいはその支援をする)」ことだと、このブログで何度も主張しています。

この価値というのは、中小企業の「高貴な取り組み」のことを指します。中小企業は、日々”価値”をお客様に提供し、経済活動を行っているのです。

中小企業診断士の立場は、このクライアントの高貴な取り組みどうしを引き合わせて、新しい価値を創り出すことです。

このサービスを”ビジネスマッチング”と言います。

ビジネスマッチングができない中小企業診断士は、そのミッションを半分も達成していないことと心得ましょう。

ビジネスマッチングは、ただの紹介コンサルティングではありません。”新しく価値を創る”仕事ですから、その価値を創造する支援をハンズオン(手をかけて)実施することが肝心なのです。

「紹介した後は、どうぞご勝手に…」というスタイルでは新しい価値を創ることなどできません。

小生も、これまで数々のマッチング支援を通して、新しい商品を開発したり、新しいサービスを開発したり、新しい取引先を開拓できたり、まさにWin-Win-Winの構築を実現支援してきました。

ビジネスマッチングは、イノベーション(経営革新)を実現することができ、クライアントからとても喜ばれる、”究極のコンサルティング”ということができます。

当然ながら、ビジネスマッチングに必要なスキルと条件があります。まず、多岐にわたる人的ネットワークを有していること、そして貴重な価値を創る企業に対する好奇心を持ったアンテナを立てていることは必要です。

全く新しい領域に飛び込み、取材し、信頼を勝ち取り、マッチングを実現するコーディネート力が必要不可欠です。

また、手をかけて”新しい価値を創り出す”手伝いができる「ハンズオン支援スキル」が重要になります。

 

投稿日: 2020年9月10日 | 10:37 pm

中小企業診断士のマインドセットーARIKATA【37】

【中小企業診断士が成すコンサルティングサービス:戦略会議支援】

単年度事業計画書の策定支援を終了したとき、計画書のPDCAサイクルを回す戦略会議を実施する提案を速やかに行います。中小企業経営の多くの会議が、上意下達の姿を呈しています。ワンマン経営者の意向がそのまま、現場の医師として確立されて運営されていく形です。

この姿は、是非は別として(メリット、デメリットあります)、機動力が発揮されるべき中小企業経営において、社長の意向が即行動につながるような運営の方策としてあり得ます。

しかし、経営というものは長期的に戦略を考案していくことが必要です。長期的に取り組む戦略の中で、最も重要な戦略が”人財育成戦略””組織(チーム)構築戦略”です。人材を採用し、人財として育てる義務を、中小企業経営は担っています。

実は会議のあり方を変えるだけで、人財育成戦略に実行につながるものです。人財が育っていない企業の診断などを実施すると、会議の空気感が”圧迫型”であることが多い。

はっきり言いましょう。圧迫型の戦略会議は、もはや時代遅れ。”百害あって一利なし”です。理想の戦略会議とは、発言しやすい空気感が絶対に必要です。

会議は議論・ディスカッションの場ですから、議論できないようなトップダウン型会議は、報告会で十分なのです。

明日からまた頑張ろう!と参加するスタッフが、熱い思いを巡らせる会議。これが中小企業経営の会議体系の理想と言えます。

中小企業診断士は、その(戦略会議)ときプロのファシリテーターとして、明るい発言しやすい空気感を演出します。また、外れがちな論点を修正し、必要な助言を提示します。最後に決定事項の確認を(5W2H)で確認して閉めます。

この会議支援は、PDCAサイクルを実直に回し、プラスのスパイラルを作り出すウネリとして、コンサルティングサービスのひとつに加えてほしいと思います。

投稿日: 2020年9月8日 | 10:16 pm

志の航跡 〜仲間たちへのエール〜

【ビジネスの体系を総合的に学ぶ】

今日は台風10号の影響で、クライアント訪問が延期となりブログの更新をする時間がゆっくり作れました。そこで久しぶりに、中小企業診断士を志していた頃を思い出したいと思います。

2007年4月に法政大学経営大学院の者をくぐって、早13年の月日が流れました。2007年の1年間は、年齢が38歳。本当に熱く研究に没頭した夢のような1年間でした。

中小企業診断士養成課程は、今年で13期生を迎え、法政大学の中小企業診断士養成課程(MBA特別プログラム)は、数ある養成課程の中でも人気の学び舎として、認知されていることを本当に喜ばしく、誇らしく思っています。

今年はコロナ禍での授業で、学生の皆さんは不自由な思いの中研究に打ち込まれていると察します。しかしこの逆境も”何かのご縁”と捉えて、無事に中小企業診断士として羽ばたかれることを心から祈念しています。

小生も、中小企業診断士として12年の経験を積むことができました。学生の皆さんに、アドバイスができるとすれば、大学院(そのほかの養成課程も同様です)においては、ビジネスの体系・本質を大局的に学んでいただきたいと思うことです。

法政大学経営大学院では、プロジェクトと呼ばれる修士論文のような位置付けの研究レポートが課せられます。取り組む内容は自由ですが、中小企業診断士を志す人は「ビジネスモデルの組み立て」に取り組んでほしいと思っています。

コンサルティングビジネスのプロジェクトに取り組むこともいいのですが、コンサルティングは、診断士として登録してから必然的に向き合うミッションです。

ですので、「面白い、役にたつ、社会的価値の高い」ビジネスを考案し、モデル構築をしていくプロジェクトがおすすめです。

事業構想をし、価値を検証し、競合先をリサーチし、オンリーワンポイントを見つけて磨き上げる…。そのプロセスをプロジェクトとしてまとめ上げる。

この挑戦は、大学院を修了し中小企業診断士としてフィールドに出たとき、必ず武器となる経験です。

投稿日: 2020年9月7日 | 1:52 pm

『燃える人事考課制度』のメカニズムー9

【定量評価と定性評価】

先述しましたが、人事考課制度を策定するときに必ず議論の対象になるのが、定量評価と定性評価の比率です。定量評価は「量で測れる評価」ですからすなわち「業績評価」ということになります。業績は、正しい経営をした結果現象にしか過ぎませんから、定量評価のみで人事考課制度を作ってしまうと、とんでもない社風を作り上げてしまうことになります。

定性評価は、いわゆるプロセス評価ということになります。どんな行動をして、事業に貢献できたか?を評価するいわば「燃える人事考課制度」の根幹ともいえる考え方です。

業種業態、企業の状態によっても違ってきますから、定量評価と定性評価のバランスはじっくりと議論しなければなりません。

以前、「仕事は結果が全て!」という経営者が、定量評価(業績評価)のみで人事考課をするケースを観ましたが、その後この会社は様々な優秀な人材が流出(辞めて)し、空中分解しました。このように、業績評価のみで人事考課制度を策定することは、簡単かも知れませんが、大きな弊害を招きます。

「燃える人事考課制度」は定性評価(プロセス評価)に重点を置き、徹底的に議論して創り上げます。

ある企業の事例です。以前は定量評価:定性評価の割合を9:1で決めていた仕組みを、思い切って5:5に転換した販売会社があります。販売会社は、「売ってナンボ」の企業風土が定着する傾向がありますが、それでは社員のモチベーションはなかなか上がらないのです。同時に、業績が属人的になり企業全体で”戦っていく”というチームワークが醸成されません。

この事例の販売会社は、今までの業績重視の社風が是正され「働くモチベーション」を重視した社風が醸成されました。結果、ブレない経営基盤を構築して現在も躍進中です。

会社はチームワークの塊ですから、属人的な業績よりも組織的な業績が好ましいということは自明の理です。一人のヒーローが育つよりも、全体的な底上げが望まれます。

定量評価と定性評価をバランスよく議論して決定し、全体最適を図ることが重要です。

投稿日: 2020年9月6日 | 10:58 pm