M&A戦略への警鐘

近い将来、いやすでにそういう時代の真っ只中かも知れません。中小企業経営(特に地方の企業)や下請け企業の、事業承継は深刻さを増していきます。

価値のある経営をされているのに、後継者が不在なために事業を断念せざるを得ない…。そのリスク回避のひとつに、M&A戦略があります。僕は個人的に、M&A戦略推奨派です。しかし、様々な条件をクリアした場合の話です。

好調な企業が、事業承継に困っている企業を買収し、社員の雇用やお客様に提供する価値を守っていく…この取り組みは、本当に素晴らしいと考えています。

ただし、M&A戦略自体は机上の空論では片付けられない、深刻な課題が存在するのです。

それは、人間の感情や企業の社風、理念や価値観といった目に見えないファクターです。目にえないからこそ、厄介であり手間暇かけてケアしなければならない課題なのです。

M&Aに失敗した場合、それ双方にとって多大な不幸を招きます。

M&Aを手がけるコンサルタント会社も存在しますが、気をつけて支援を受ける様にしてください。

重要なのは、買収した会社から来る経営者(幹部の場合もあります)が、リスペクトに値するかどうか…ということ。そして、彼(彼女)にマネジメントパワーを発揮できる人間的魅力と、問題解決力が備わっているかということが重要なのです。

間違っても、売買終了時点で支援が終わり…というコンサルティング会社には要注意です。

M&A戦略は、買収してからがスタート。軌道化(3年間ほどのモニタリングと、問題解決支援)を覚悟して臨みましょう。

投稿日: 2021年10月26日 | 5:52 am

精神論だけでは闘えないが、精神論がないと闘えない

中小企業経営は、何より心が大切です。お客様に対する心、社員に対する心、地域社会に対する心、外注先・協力会社に対する心…すべて大切なファクターです。

心…つまり精神なのです。中小企業は精神がとても大切であり、精神が伴わないとせっかくの企業価値を、正しくお客様や社員に伝えることができないのです。

しかし、精神論だけでは闘っていけないのが実状。その上に「やり方」である政策や戦略が乗っかってくるのです。多くの経営者が、すぐに「やり方」を知りたがります。

セミナーや講演講師を務めたあとは、なおさら。「その方法を教えてください」という質問が来ます。これ自体は大切なことなのですが、セミナー自体のテーマも「やり方」を教授する内容があまりにも多い。

例えば、「人財の育て方」「粗利益の上げ方」…すべてやり方です。書店に行くと、その手のタイトルのビジネス書が何と多いことか…。

はっきり言いますが、ビジネスにはテッパン手法など存在しません。個別具体的な課題には、個別具体的な手法で、個別具体的に戦略実行して解決していくしかないのです。

その戦略実行を推進するモチベーションとなるのが、企業精神なのです。精神が伴わない戦略は、推進していくことが難しい。テクニックに走ってしまうと、継続ができないからです。

その企業精神を文言にしたものが、経営理念と呼ばれるもので、何のために経営するのか?を見える化したフレーズ。すべての戦略(やり方)は、理念にマッチしたものでなければ、うまくいかないのです。

投稿日: 2021年10月25日 | 5:46 am

コンピテンシー理論による昇進制度

中小企業会社経営は、階層形になっていますよね。企業の規模が拡大していくと、社員の人数も増えていきます。当然ですが、ガバナンス(統治)を保つために、階層形をつくって分業(役割分担)や指示命令系統ラインを明確にしていく必要があります。

ちなみに、組織図は「誰が偉いとか上下関係を示したモノでなく、ただの指示情報のラインを見える化」したものにしか過ぎません。

さて、人事は中小企業経営の中で非常に重要な戦略です。その人事戦略の中で、昇進制度はかなり練って戦略立案する必要があります。とかく昇進制度は重要で、昇進すると役職者と言うことになりますから、部下がつくことになる訳です。

中小企業経営にあるあるなのが、スキル=マネジメントという間違い。例えば、「販売力しかない人が店長になる」という間違った事例です。

リーダーの最大の条件は、「人から慕われる人間的な魅力があるか?」です。「仕事ができる=人間力」では必ずしもない訳です。

僕も経験がありますが、人間的におかしい人が上司になると、それは悲劇です。部下は上司を選べませんから…。

そこで、コンピテンシー理論の導入による昇進制度を推奨しています。

つまり各役職の「あるべき姿、言動」を見える化して、昇進の判断基準にする手法です。そのコンピテンシー条件に合わない人を幹部にしてしまうと、後々大変な事態になります。

下手をすると、チーム・組織崩壊を招きかねません。

昇進制度は、明確なコンピテンシー条件を具体的に文言化して、昇進の際の判断基準としてください。

投稿日: 2021年10月22日 | 5:27 am

投資型経費と経費型経費

昨日のブログ(研究開発費の話)を読んだ経営者から、メールで相談がありました。了承を得ましたので、ブログで紹介したいと思います。

メール内容…

「毎月ですが、顧問契約している会計事務所から月次報告があります。その際、担当者から経費(販管費)に関する助言があります。内容は、なんとか経費を下げましょう…の一点張りで、具体的にどの経費を下げていいのか分かりません。担当者に聞いても、全体的に…と言うだけで具体的的には指摘してくれないのです。何かいいアドバイスをいただけませんか?長引くコロナ禍で、売上は大幅ダウン。経費削減が必須なのはわかっているのですが…。」(原文一部修正)

前職が会計事務所だった経験から言いますと、監査担当者は具体的なアドバイスをしてくれないのが普通です。というかできないのです。彼らの思考は基本的に、法律上問題ない会計処理をして納税額を示すこと…ですから。

節税のアドバイスができる監査担当者なら、結構優秀だと思います。それを前提にアドバイスしますが、経費削減に関しては優先順位を考慮して断行します。

つまり、削減を検討する順番があるのです。資源に限りのある中小企業経営に至ってはなおさら…です。

とかく投資型(未来型)経費である、教育費、宣伝広告費、研究開発費…そして人件費。これは削減を極力しない方向で検討します。

検討すべきは経費型経費です。内容は、地代家賃、水道光熱費、諸会費、消耗品費…そして接待交際費などです。

投資型経費の削減は、企業の体力を削いでいきます、乾坤一擲の勝負をする時のために、投資型経費の消耗は極力優先順位を下げましょう。

投稿日: 2021年10月21日 | 5:52 am

研究開発費の話

中小企業経営は差別化の経営(オンリーワン経営)が理想とされます。お客様が欲しくたまらない商品を、開発する(仕入れる)ことが重要な戦略手段となります。

僕はどんな業種においても、中小企業経営は「研究開発費」というものを予算化し、計上して、新しい商品(サービス)を創造していくことを推奨しています。

しかしながら、中小零細企業においてはまだまだ、研究開発という重要戦略を軽視している傾向が伺えます。中小企業は「新しい価値の創造行為」といっても過言ではない。そのためには、弛まぬ開発戦略は必須なのです。

言うまでもなく、研究開発費というのは「未来型(投資型)経費」です。投資なき経営は衰退していきますから、開発そのものを怠る経営をしていると、商売の拡大は望めない訳です。

開発戦略の立案と実行によるオンリーワン戦略に着手しないと、つまるところ「価格競争にさらされる」ことになる訳です。

中小企業経営の最大のタブーは「価格戦略」ですから、経営そのものの力を削がれるということになります。

法政大学時代の恩師・坂本光司先生は、中小企業の売上高対研究開発費率を5%を目処に、限りなく上げていく努力が必要と説かれています。

僕は、せめて売上総利益(粗利益)の5%を目処というのが、現実的かと考えています。

ともかく中小零細企業は、研究開発を重視して経営戦略実行していくことが求められます。タブーである価格戦略を回避するためにも、新しい価値を生み出す研究開発に注力していきましょう。

投稿日: 2021年10月20日 | 5:01 am

中小企業経営者のARIKATA学【プロローグ】

先日会社のオフィスで、書類やデータを処理していた時のこと。名刺交換した経営者の数はおよそ1000人。面談した経営者は、およそ500人であることに気づきました(大学院時代〜会計事務所〜独立後に渡る14年間)。

この仕事をしていると、中小企業経営者の「あり方やマインド、特徴」というものに強制的に触れ合うことになります。当然ですが、リスペクトできる経営者像、リスペクトできない経営者像が浮き彫りになるわけです。

また、中小企業診断士は経営コンサルタントですから、経営者の人間学を見つめなければならない仕事です。自然と、その「あり方」を研究する機会に触れるわけです。

およそ20年間の中小企業経営の現場を駆け回った経験から、実に様々なタイプの中小企業経営者と触れ合ってきました。その特徴も、分かってきました。その中で、成功する経営者、失敗する経営者の「ARIKATA」が明確になってきました。

中小企業経営者の皆様、あえて問います。あなたは、社員からリスペクトされていますか?慕われていますか?信頼されていますか?

自社の社員からリスペクトされない社長が、お客様から信頼をかと勝ち取れるでしょうか…。

続けて問います。支援者・協力会社、ステイクホルダーを見下したように接していませんか?「こっちは金払っているんだ!」という考えのもと、無理な要求をしていませんか?

中小企業は、支えられる経営をしていく必要があります。協力者(会社)を社外社員として大切に接していますか?

このブログを通じて、改めて中小企業社長のマインドや姿勢を啓発情報として、発信していきたいと考えています。

経営は「やり方」ではない「あり方」が問われるというのは、恩師・坂本光司先生の言葉。

この言葉の意味を、毎日経営の現場を駆け回る度に噛み締めている今日この頃なのです。

この「あり方」を、現場からの生きた発信という形で書いていきたいと考えているのです。長い長い執筆になりますが、時々このタイトルで書いていきますので、是非ご参考にしていただければ幸甚です。

 

投稿日: 2021年10月19日 | 6:25 am

燃えよ剣。観てきました。

岡田准一主演の映画『燃えよ剣』を観てきました。司馬遼太郎の原作を読んでいた僕には、ストーリー性のサプライズこそありませんでしたが、十分に楽しめる内容でした。

岡田准一演じる新撰組副長の土方歳三は、とてもかっこよく、イメージにマッチしています。

実在の人物は、どんな漢だったのか?当然知る由もありません。しかし、史実どおりであれば、信念に行き信念に殉じた英雄であったと思われます。

トップ(近藤勇)を補佐するとは、どういうことか?

経営コンサルタントである僕にも、改めて考えさせられる様な台詞の数々でした。いや〜面白かった。

何より、勝てるとは到底思われない戦いに、不屈の精神で向き合う姿は、心打たれます。

僕は幕末の志士の中に、リーダーシップをみることができると思っています。薩長同盟という、究極のコーディネートを成し遂げた坂本龍馬。

大胆な発想で、幕府軍と渡り合った長州の英雄・高杉晋作。

そして、土方歳三。まだまだ統率力が希薄な組織を引き締めるために、法度というルールを作り、厳しい取締りを実行。トップの近藤勇には、憎まれ役をさせず、すべての不満を自らに向けさせる…強い組織というのは、強いリーダーが存在するのでしょう。

ただ厳しいだけの幹部ではなく、自ら進んで実行する率先垂範力に、部下のリスペクトが生まれるのだと思います。

土方歳三は文才もあり、俳句が趣味だったとか…。彼の読んだ句「知れば迷い、知らねば迷わぬ 恋の道」。かっこよすぎでしょう。

 

投稿日: 2021年10月18日 | 5:51 am

東京にてー2

先週土曜日から5泊6日で上京しましたが、本当に実り多い出張となりました。メルマガにも書いたのですが、5年ぶりの東京はますます美しい都会に変貌している印象でした。

夜の超高層ビルに灯るオフィスの明かり…。幻想的な、通りに並ぶ照明たち…。何より日本の中心地なのだという、凛々しさすら感じる街並みは、「たまには行かなきゃな…」と思わせるのに十分でした。

今回の出張では、やはりメインスケジュールとなっていた、母校・法政大学経営大学院でのゲスト講師が印象的でした。オンラインと対面を併用した講義となりましたが、中小企業診断士やMBAを志す学生の皆さんの真剣さに触れることができました。

恐縮ですが、先輩診断士として気を引き締めて価値ある業務に当たることを、改めて誓った次第です。

ゲスト講師後は、同期(イノベーションマネジメント研究科MBA特別プログラム・中小企業診断士養成課程)の数人と食事会でした。

今回は4人の元学生と一人の教授(松本先生・大恩師、感謝しかありません)の5人でしたが、それはそれは大いに笑いあった、楽しい楽しいひと時でした。

修了してから13年が経過しますが、あのころと同じ笑顔、テンション、昔話に花が咲かせられるのは、苦楽を共にした本当の仲間だからでしょう。

第1期生であった我々14人。まだまだ未完成だったカリキュラムや授業内容に、時に戸惑いながらも一生懸命に中小企業経営の研究に没頭した日々。人生に夢のような時間があるとすれば、僕ばあの時の1年間だったと断言できます。

まだ同期が一堂に会した機会がないので、来年は絶対に同窓会を企画したいと目論んでいます。

 

投稿日: 2021年10月16日 | 8:05 am

東京にてー1

先週の土曜日から上京しています。およそ5年ぶりの東京。昨年4月にも機会があったのですが、情勢が悪化するコロナ禍で断念していたのです。

前回もそうでしたが、母校・法政大学経営大学院からのゲスト講師登壇の依頼を受けての上京です。

それにしても、時々は上京して日本の中心地の風を味わうモノですね。

今回は、せっかくということもあり、出版社や新しいお仕事の依頼を受けての打ち合わせを兼ね、充実した出張になっています。

現在進めている、単独での出版(電子書籍ではない出版)に関するリサーチ。2社ほどの出版社に絞り、プロジェクトを進めることにしました。

本の内容やタイトルは明かせませんが、読者が刺激を受ける内容に仕上げようと思っています。

ホームページを通して、とても有意義な仕事依頼に関する相談を受けました。ご依頼された内容は、今後のコンサルタント人生を左右する内容になることが間違いない。

ご縁が成就すれば、誠心誠意取り組みたいと考えています。

昨日は大学時代の後輩と、渋谷で食事。

同じ業界で、同じ志のもと活躍する後輩です。コロナ禍でも、ともに愉しいひとときを過ごせる友人がいることに感謝です。

東京の飲食店は、21時閉店。閉店までゆっくりと、これからの人生を語り合いました。

渋谷の街は、ずいぶんと人手が戻っています。都内は何処も…です。アフターコロナを実感します。

コロナ後に備えたクライアントの躍進戦略をじっくりと練るとき。今回の東京主張を良い機会に、改めて気を引き締めることができました。

投稿日: 2021年10月12日 | 11:10 pm

経営者の発言が組織に与える影響

経営者の言動が社員に及ぼす影響は、多大なものがあります。とくに、家族的経営が推奨される、中小企業経営においてはなおさらです。

過去、ご縁があった数々の経営者の方々…中でも「発信力が温かいなあ」と感じる経営者の方もおられました。一方で、「どうしてそんなことを言われるのかなあ…」と残念感を持つ経営者もおられました。

日本語というのは美しい言語であり、人々の心を打つ表現が自在に可能になります。逆に、言葉を間違うと、人を深く傷つけてしまう凶器にもなりかねません。

中でも、全体に使って欲しくない発言があります。

それは、「誰が給料払ってると思っているんだ?」という発言です。

だいぶ前に、当時クライアントであった経営者が発した言葉でしたが、勘違いですね。

社員の給料の出所は、一途に「お客様から」です。会社は、お客様からいただいたお金を、お給料という心の価値を付加して、社員の方々に配分しています。

このような発言は、社員の忠誠心を削ぐどころか、極めてモチベーションを下げてしまいます。結果待っているのは、”退職”という結末です。

中小企業経営者は、社員からリスペクトされなければなりません。好かれなければなりません。慕われなければなりません。

経営者が社員から好かれると、社員は「社長のため」「社長から褒められたい」「社長と一緒に頑張りたい」などの想いが生まれ、志高く頑張ってくれます。

それには、「言葉は人格を表す!」というように、発信する内容には十分配慮するスキルが必要です。

せっかく人間味あふれる経営者なのに、心ない発言でカリスマ姓を落としたら意味がありません。

投稿日: 2021年10月8日 | 5:29 am